「ど近眼のマッキーさん エピローグ」


 マッキーさんは、ソーラさんに片思いをしている。
それは、どうも、ちょっとって感じで。かなわぬ鯉の滝登りーかも知れない。

 しかし、それはそれで仕方のないことだ。
だが、マッキーさんがこだわっていることは、それだけではない。(ほんとか、負け惜しみのような)

 マッキーさんはど近眼であり、ときにひねくれたり、いじけたり、頭をかかえたり、穴があたっら入りたくなったりしながら、元気に生きている。
 これまでは、それは一人だけの問題であった。

 しかし、ど近眼のマッキーさんに限らず、ハンディのあるミニダックスでも、たのしく元気で生きてゆける世界、
それは、実はみんながお互いに、理解しあい、誰もが生き生きと生きてゆけることなのである。
マッキーさん一人がひねくれていればそれでいいというわけではないのだ。マッキーさんひとりの 問題ではないのである。
 なぜなら、完璧なミニダックスはこの世にはいないからである。
みんなそれぞれに、問題を抱えて日々を必死に生き抜いているのである。

 最近、嫌煙権にしろ、女性の地位向上、母性保護の拡大にしろ、労働時間が短縮されて週休二日制がついに学校にまで普及したり、世の中は変わりつつある。
 パソコンや携帯電話やインターネットの普及など技術文明の進歩に伴って、人の頭の中も変わりつつある。人間が奴隷であった時代だって大昔ではない。今でもその名残は残っている。らいてうさん(女性の地位向上)が今の時代を見たらどう思うだろう。
そう、時代は変って行くのである。きっと。

 マッキーさんがど近眼から開放されることはないけれど、きっと未来には、また別の考え方があるはずである。

 マッキーさんは、この小さなミニダックスの町が、ど近眼でも、みんなに理解され、一生懸命に働き、笑顔で生きてゆける、そんな街であればいいなとあこがれている。

 そんな未来にひとり片思いしているのかも知れない。
そんな街はきっと、多くのミニダックスたちにとっても、実は、もっとたのしい町なのである。


 「マッキーさん、マッキーさんちょっと、ちょっと」

 おせっかいなアスカさんが登場である。

「あなた、さっきから、そんなところで、ひとりで偉そうにワンワンワンワンほえまくっているけれど…」

「わんわん」(そんなことないでしょ)

 「そんなことは、みんなよくわかっているのよ。あなたのことはみんなもよく分かっているのよ。でもね、いったい何がしてほしいわけ。いったい何をしろというの。
ちっとも分からないわよ。あなた、ちょっとひねくれてるんじゃないの」

 「わ、わん」(ドキッ、そ、そ、そうでもないと思うんだけど)

「大丈夫よ、安心なさい、おはようぐらいいってあげるわよ。
あと、迷子になったら見つけてあげるからね。他は特にする事も無いわよねー。」

 「わん」(まあそうです」

 「それにあなたね、ど近眼なんでしょ。見えないでしょ。出来ないこともあるわけでしょ。みんなに迷惑かけてるのよ。
世話にもなってるのよ。お礼ぐらい言ったらどうなのよ。お礼ぐらい。」

 「わんわんわん」(それは、そのとおりだなー)

 「あんたなんか、ど近眼だからまっとうな悩みよね。
私なんか胴がもう少し丸太みたいじゃなかったら?鼻筋がもう少しピッてしてたらなーとか、結構真剣に悩むのよ。あんたには分からないでしょうね。」

 「うー、ワン」(そうかもしれないなー)

 「わたしなんか、そこがクリアできれば女優よ。女優。今ごろ銀幕のなかよ。こんなとこでマッキーさんなんかと話してないわよ。」

 「わーん」(ほんとかよ)

 それに、マッキーさんは、ふとあることに気付いた。
これは、最終回でも何でも無いのであった。
これからまた、ミニダックスのエッセイを書き、すばらしい曲を捜しに行くのである。

 それに、こんなとこでウロウロしていて、またグラサンのじいさんミニダックスに、しっぽをくわえられ振り回されたら大変である。

 マッキーさんは、今日の記念に、いつもの電信柱に、いつものようにおしっこをかけて、さっさとウチへ帰ることにした。


 あれっ、そういえば、いつになったら人間に戻れるんだろう?

 
               (おしまい)

 (このページに流れている曲は「One Sided Love」です。yuukiさんの曲を使わせて頂いています。どうぞ聞いてください。)

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