意識はある。ちょっと、身体を起こしてみる。かなりヤバそうな感じだ。
やられたのは……
そう、肩である。
その部分の着ぐるみが裂けてしまった。
ショボさんはもう立ているのがやっとだ。
その場にうずくまってしまった。
しかしグラサンじいさんは、まだ、この攻撃を打ってなを、三分一のテレパシーエネルギーを温存しているのである。さすがというしかない。
マッキさんは、肩をおさえて半身になっている。
グラサンじいさんがゆっくりとこちらへ近づいてくるのが見える。
あー 、悔しいなー。負けっちゃったのかなー。
そのときであった。
カエルさん、負けないで、頑張ってー。
ソーラさんとアスカさんからテレパシーが送られてきた。それには、相当の応援のエネルギーも含まれていたのである。
その声を聞いた瞬間。着ぐるみのカエルさんは立ち上がり、近づいてくるグラサンじいさんへ向かって行った。
グラサンじいさんは度肝を抜かれる。
しかしすぐに体制を立て直す。
カエルはまず、使えない肩を庇いつつ、右手のパンチを繰り出す。
しかし、ミニダックスであるため前足が短いので届かなかった。
しかし、グラサンじいさんに油断はない。ちょっとだけ。口の端がニヤリとした。
次に着ぐるみカエルさんは、蹴りを繰り出す。これに自分の最後のテレパシーエネルギーを込めた。しかし、やはりミニダックスなので後ろ足が短いので届かなかった。
このお粗末の成り行きに、さすがのグラサンじいさんも口元がデヘーっとかなり緩んだ。
そう、さすがのグラサンじいさんもその瞬間に勝ったと確信したのである。
しかし、着ぐるみガエルさんの攻撃はこれで終りではなかったのである。
むしろ、この一撃のためにすべてはあったのである。
グラサンじいさんもこのことを忘れてはいけなかったのである。
いきなりの攻撃にほんの一瞬平常心を失ったのかもしれない。
そう、シッポなのだ。ソーラさんとアスカさんの応援テレパシーのすべてを最後にシッポに込めて。しなやかな長い胴体の筋力から生み出されるバネを生かして、振り向きざまに、思い切り振り抜いたのである。
グラサンじいさんは倒れた。
その表情はむしろ喜びに満ちていた。きっと勝ったと思った瞬間に意識を失ったのであろう。
それをみて、ショボさんは、すたすたと逃げていった。
「覚えてろよー。」
危機は去ったのである。
ふと我に帰ると五時の鐘がなっていた。
マッキさんが、この姿でいられるのは五時までなのである。
「あっ、大変だー。もとの姿に戻ってしまう。わたしは、これで失礼します。」
着ぐるみカエルさんは、あっという間に、走り去ってしまった。
「あっ、お待ちになって……。せめてお名前だけでも……。」
追って行くと建物の角を曲がったところにカエルの着ぐるみがひとつ落ちていた。
さっきの激しい戦いで、肩のところが破れて、こげている。
「あっ、これは、さっきのお方の着ぐるみ……」
ソーラさんは思うのである。もう一度あの方に会いたい。
この着ぐるみにちょうどフィットするお方が、あの方なのね……。
このあたりで、いいかげん止めますけれど(^^;)
翌日、マッキさんがいつも通りにやってきた。
「きのうお祭りでちょっと転んじゃってね。」
見れば、頬の所にばんそうこうが貼ってある。
肩も打ったとのことで、痛そうにしている。
ソーラさんとアスカさんは
「えーーーーーっ、まったく、なにやってんのー。ばーかねー。」
といったきりなのであった。
(2002.12.23)
(このページに流れている曲は、だんちさんの「カケラ」です。カッコよくて、渋い感じです。
エッセイの格闘シーンの緊張感をつくっていただいていると思います。)