「 クリスマスでもやろうか その三 」



 
 たしか、いつかもなべをやっていて……。
誰かがイルカの肉というめずらしいものを手に入れた。
それで、それをいつの間にか、なべに放り込んだのだのだ。

 その日は確かさっぱりと海の幸系でまとめられていた。
イルカは確かに海の幸系ではあるのだが、食べてみたことがない。
あるいは、ここらでは、当たり前のように使われている素材なのかもしれない。

 誰が買ってきたんだろう?そして、誰が入れたんだろう。果たしてこそのまま入れてよかったんだろうか。汁がどす黒く染まってしまった。
まあ煮えてしまえば恐るに足らずではある。
イルカちょっと食べてみたいけど、どんな味だろう?

 しかし、そのなべはそれで終わったのであった。


 このように、この寮は不思議と言えば不思議なところであった。
そのような住人がいるのである。
 今晩は、それでもまともに、すきやきが行われているのである。


 ビールもまわって来て、会もたけなわの頃。

 「いやー、やってますね。」

どこかできっと、忘年会をやっていたんだろう。そこから流れてきたかな。
二人連れが、やってきた。

 そう、ショボさんとグラサンじいさんである。

 (呼んでないなー)マッキさんはちょっと思う。

 ショボさんとグラサンじいさんとは、「生き生き胴も長いぞー祭り」の日に、ケンカをしてしまったのである。ちょっとばつが悪いなー。

 しかし、ふたりはどこで買ってきたのか大きなケーキを下げてきたのである。
 
 「これ、みんなで食べましょう。」

とショボさんは言うのである。

 「いいねー」

 とみんなは思う。
デザートはみかんくらいしか用意されてなかったのである。

 狭い部屋がいっぱいになってしまった。
まあ、寮ではこのようなことが、よくあるのである。
 しばらく、飲んだり話したりして、

 ショボさん、グラサンじいさんは、ケンカもしたし、ちょっと苦手意識もあったが、こうして近く話してみると、なかなかいい人だったりする。

 アスカさんはいう。

「せっかくのケーキを食べましょう。せっかくだからちょっとろうそくでも灯して見ましょう」

 それで、その大きなクリスマスケーキにろうそくを灯してみたのである。

 部屋を暗くしてみたりして。
それは、それなりに綺麗ではある。

「なかなか綺麗なもんでうすねー。エヘヘ。」

ショボさんがマッキさんにそう話し掛けたりするけれど

こんな、クリスマス忘年会も悪くないなー。


 マッキさんはふとあることを思いついて、グラサンじいさんに聞いてみる。

 「あのー、すきやきってさー、確かー、さとう入れるよねー、普通?」

 グラサンじいさんは一言、

 「いやー、それじゃ甘くなっちまうぞー。」

 うっそー。 > (・о・) < 
 
    ( おしまい )

                    (2003.1.2)


(このページに流れている曲は「Don't Say Good-by」です。ラスティネーイルさんの作品を使わせていただいています。あの寮生活から、ずいぶん時間が流れてしまいました。)


  (ページのアップロード 2003年4月13日)