たしか、いつかもなべをやっていて……。
誰かがイルカの肉というめずらしいものを手に入れた。
それで、それをいつの間にか、なべに放り込んだのだのだ。
その日は確かさっぱりと海の幸系でまとめられていた。
イルカは確かに海の幸系ではあるのだが、食べてみたことがない。
あるいは、ここらでは、当たり前のように使われている素材なのかもしれない。
誰が買ってきたんだろう?そして、誰が入れたんだろう。果たしてこそのまま入れてよかったんだろうか。汁がどす黒く染まってしまった。
まあ煮えてしまえば恐るに足らずではある。
イルカちょっと食べてみたいけど、どんな味だろう?
しかし、そのなべはそれで終わったのであった。
このように、この寮は不思議と言えば不思議なところであった。
そのような住人がいるのである。
今晩は、それでもまともに、すきやきが行われているのである。
ビールもまわって来て、会もたけなわの頃。
「いやー、やってますね。」
どこかできっと、忘年会をやっていたんだろう。そこから流れてきたかな。
二人連れが、やってきた。
そう、ショボさんとグラサンじいさんである。
(呼んでないなー)マッキさんはちょっと思う。
ショボさんとグラサンじいさんとは、「生き生き胴も長いぞー祭り」の日に、ケンカをしてしまったのである。ちょっとばつが悪いなー。
しかし、ふたりはどこで買ってきたのか大きなケーキを下げてきたのである。
「これ、みんなで食べましょう。」
とショボさんは言うのである。
「いいねー」
とみんなは思う。
デザートはみかんくらいしか用意されてなかったのである。
狭い部屋がいっぱいになってしまった。
まあ、寮ではこのようなことが、よくあるのである。
しばらく、飲んだり話したりして、
ショボさん、グラサンじいさんは、ケンカもしたし、ちょっと苦手意識もあったが、こうして近く話してみると、なかなかいい人だったりする。
アスカさんはいう。
「せっかくのケーキを食べましょう。せっかくだからちょっとろうそくでも灯して見ましょう」
それで、その大きなクリスマスケーキにろうそくを灯してみたのである。
部屋を暗くしてみたりして。
それは、それなりに綺麗ではある。
「なかなか綺麗なもんでうすねー。エヘヘ。」
ショボさんがマッキさんにそう話し掛けたりするけれど
こんな、クリスマス忘年会も悪くないなー。
マッキさんはふとあることを思いついて、グラサンじいさんに聞いてみる。
「あのー、すきやきってさー、確かー、さとう入れるよねー、普通?」
グラサンじいさんは一言、
「いやー、それじゃ甘くなっちまうぞー。」
うっそー。 > (・о・) <
( おしまい )
(2003.1.2)
(このページに流れている曲は「Don't Say Good-by」です。ラスティネーイルさんの作品を使わせていただいています。あの寮生活から、ずいぶん時間が流れてしまいました。)