窓の外では、マッチ売りのソーラさんが……、
凍えるからだに、もう寒ささえも感じないのである。
「もうお父さんの所へ帰ることも出来ないわ。」
もう、ソーラさんには、帰る気力もないのである。
そこにただじっとしていたいと願うのである。
「あっそうだ。マッチをすったらきっと暖かくなるわね。」
ソーラさんは、売り物のマッチをすってみる。
本当は、売り物のマッチを勝手に使ったら、お父さんに叱られるのである。
こんなときになってまで、そんなことを気にしているソーラさんであった。
マッチを灯してみる。
周囲がパッと明るくなった。
その優しい黄色みを帯びたあたたなともしびの中で、
雪もまた、暖かそうな色に染まるのであった。
ソーラさんは、目を輝かせる。
「まあー綺麗」
ソーラさんはマッチの灯りをただただ見つめるのであった。
しかし、次の瞬間、世界はまたくらく闇に包まれる。
かじかむ指、もうマッチをすることもうまく出来ない。
ボッ、
また世界は、光に包まれる。
その光の中に、父の姿が浮かんでくる。
今日はお酒は飲まないの?
父は言うのである。もうお酒はやめたんだよ。
咳も今日はしていない。
明日から、働きにでるぞー。
何か張り切っているのである。
マッチが消えて闇に包まれる。
ソーラさんは、幻を追いかけるように……
また、マッチを灯す……。
光の中で、見たことのない女の人が優しく笑っている。
おー、ソーラかい。大きくなってねー。
よく頑張ってきたんだねー。
まだ、ここに来てはダメよー。
へっ、そうなのー。話が違うんじゃないー。
ダメったら、ダメよー。
ちょっと、聞いてないなー。話が違う……。
ソーラさんは、慌ててもう一本マッチをする。
また灯りがともる。
光の中に浮かぶその影は……。
えーーーーーー。
こんなのーーー。ヤダーーーー。
光の中に浮かぶ姿は、
その五