「 マッチ売りのソーラ その四」




 窓の外では、マッチ売りのソーラさんが……、
凍えるからだに、もう寒ささえも感じないのである。


 「もうお父さんの所へ帰ることも出来ないわ。」 

 もう、ソーラさんには、帰る気力もないのである。
そこにただじっとしていたいと願うのである。


 「あっそうだ。マッチをすったらきっと暖かくなるわね。」

 ソーラさんは、売り物のマッチをすってみる。
本当は、売り物のマッチを勝手に使ったら、お父さんに叱られるのである。
こんなときになってまで、そんなことを気にしているソーラさんであった。

 マッチを灯してみる。
周囲がパッと明るくなった。
その優しい黄色みを帯びたあたたなともしびの中で、
雪もまた、暖かそうな色に染まるのであった。

 ソーラさんは、目を輝かせる。

「まあー綺麗」

 
 ソーラさんはマッチの灯りをただただ見つめるのであった。
しかし、次の瞬間、世界はまたくらく闇に包まれる。

 かじかむ指、もうマッチをすることもうまく出来ない。

ボッ、

また世界は、光に包まれる。


 その光の中に、父の姿が浮かんでくる。

 今日はお酒は飲まないの?
 
 父は言うのである。もうお酒はやめたんだよ。
 咳も今日はしていない。

 明日から、働きにでるぞー。
何か張り切っているのである。

 マッチが消えて闇に包まれる。


 ソーラさんは、幻を追いかけるように……
また、マッチを灯す……。


 光の中で、見たことのない女の人が優しく笑っている。

 おー、ソーラかい。大きくなってねー。
 よく頑張ってきたんだねー。

 まだ、ここに来てはダメよー。

 へっ、そうなのー。話が違うんじゃないー。

 ダメったら、ダメよー。

 ちょっと、聞いてないなー。話が違う……。


 ソーラさんは、慌ててもう一本マッチをする。

また灯りがともる。
 
 光の中に浮かぶその影は……。


 えーーーーーー。

 こんなのーーー。ヤダーーーー。



 光の中に浮かぶ姿は、



     その五