「 アスカ地蔵 その三 」




 どっしよっかなー♪
 
 うーん、どっしよっかなー♪

  ふくよかな方の地蔵さま、ものも言わずにただただ立っておられる。しんしんと降る雪がその頭にかかり、うっすらと見ているうちにも積もってゆくのである。

 どっしよっか、どっしよっか、どっしよっかなー♪


 そう、それで、マキ作は、自分のかぶっている笠を、あいきょうのある方の地蔵さまの頭にもかぶせてあげたのである。

 地蔵さまは、何も言わない。
でも、ただ、頭を下げて、マキ作に

「ありがとよっと、サンキュ」

と言っているように思えるのである。


 まっいいっかー。

 マキ作は雪のなか、凍える手足を励ましながら、どんどん歩いた。心なしか雪が小ぶりになったようだ。そして、丘も越えてなだらかな坂道をくだり、村の我が家えとやっとこさっとこ帰りついた。

 
 あーいやー、大変だなー。
もう、行き倒れになるよ。ちょっとヤバかった。

 あの地蔵さんちょっと喜んでたかなー。

 しかし、どこかで見た顔なんだけどなー。

 囲炉裏に火をおこして、白菜、大根、にんじん、サトイモ、そして餅。
夜ではあるが、腹も減ったのでなべで煮て食べる。

 どこから除夜の鐘の音も聞こえてくる。

 そんなこんなで囲炉裏のそばでうつらうつらしていると。

 さっきの地蔵さまたちが、ベランダの戸をたたく。


「おーい、そろそろ中に入れてくれー」(カリカリカリカリ、網戸をひっかく音)

(うたた寝すると、風ひくよご主人ー。)



    (おしまい)

                  (2002.12.31)