「 威張り屋のソーラさん その三 」


 さてと、なかなか頑固である。

 もうひとつの手がある。
それはアスカさんの方から攻めることである。

 アスカさんの場合、8歳の時初めてウチへやって来たので、
少し遠慮と言うものがある。
だから何でも言う事を聞いてくれるのだ。
しかし、芸を覚えていないので、かなりの部分、アスカさんは、
あてずっぽでやっている。
 「くるんと回れ」といっているのに、うろうろ歩き回ったり、
「お鼻」というのに、コロりんと転がってみたり。
アスカさんは、とにかく分からなくなると、すぐに転がるのである。
転がりさえすれば、すべてOKと思っているようだ。

 しかし、私は、追及の手を緩めない。

「違う、違う」。

 するとアスカさんは、本当に困った顔をする。
それを見ると、あまり言っても気の毒だなと思うのである。
なんせ、8歳になって初めてウチへ来て、
やったこともない芸、「お鼻」とかやらされるんだからな。

 アスカさんは、特に「伏せ」が苦手だ。
何度やっても、「伏せ」だけは、その意味するコンセプトが全く理解できないみたい。
 それを見ているソーラさんがアスカさんをかばうのである。
一生懸命に自分が「伏せ」をやって見せたりする。

 しめしめと、わたしは思うのであるが。
むしろ、この基本的理性とでも言うものに、心を動かされたりもする。

 こんな作戦はあまり感心できない。

 でも、ソーラさんは実は、早く食事にありつきたいだけなのかもしれない。かな?

                     ( つづく )  

    その四