「はい出来上がり。なかなかうまくいったわね」
いやー実際アスカさんは、はじめてにしてはうまいものだ。
とはいえ、やけにいびつではある。
変な形だ。丸くない。頭でっかちになっていて、そのままにして置くと傾いてきて崩壊しそうである。崩れる前に食べなくちゃならない。
どうせ、つくるならば、大きく、大きく空に浮かぶほどに巨大に作ってみたいとアスカさんは、想像するのであった。
アスカさんの想像では、巨大なわたあめをつくる。
するとそれは、空に浮かんでゆくのである。それに乗って昼ねするのである。
わずらわしいことは全部忘れて、ただゴロゴロとわたあめの雲の上で一日中寝ていればいい。お腹が減れば、枕もとのわたあめをちぎっては食べるのである。
食べているうちには、わたあめの量がだんだん減ってくるから、浮かぶ力が弱まってきて、空から降りてくるという、そのようは合理的な考え方なのである。いいねー。
「ソーラさんもやってみれば。すばやくしないと。わたあめの雲が逃げていっちゃうわよ。それに、どんどん出てくるからね。のたのたしてると、大変よ。どうにもこうにもならなくなっちゃって、外に逃げてゆきそうよ。わたあめを逃がしちゃダメよ。急ぐのよ。いいー。」
アスカさんは、そんな風に思っているのである。
さっき、作ったときも、余裕の表情ではあったが、実は、かなり真剣だったのである。
ザラメ砂糖を容器に移して、今まさにわたあめ機の真ん中の穴に入れようとしている。
「位置について……、ヨーイ……、ドン。ほらほら、早くしないと……」
それほど、ふたりは真剣なのであった。
ソーラさんも必死で、わたあめの雲を追いかけ回すのであった。
「ハーーア、どうも、お待たせ」
お客さんは待っているのである。
「どうぞー」
なんかすごいかたちである。
頭でっかちで、今にも崩れそうだ。
お客さんは、怪訝そうな顔をする。
不思議そうに見ている。そして、ニヤリっと意味不明な笑みを浮かべつつ去っていった。