「 わたあめふわふわ その六 」

  


 
 まだ、ソーラさんとアスカさんがわたあめ作りに慣れない頃、
ちょっと風変わりなお客さんがやってきた。
 ショボっとした感じの人だった。まだうまくつくらなかったので、あたまでっかちのわたあめは、渡したあとポロリと形が崩れてしまった。そのお客さんの表情が少しだけれど、
さらにショボっとしたように見えたのは気のせいだろうか。

 それと、風変わりなおじいさん、ちょっと目が不自由そうだった。

「砂糖抜きでわたあめをつくってくれ」

と言ってきた。きっと医者に甘いものはいけませんよ、とか言われているのかも知れない。

 「へいき、へいき、分かりゃしないわよ」

とアスカさんは言うのである。ソーラさんは、これでホントにいいだろうかと思う。

 ザラメ砂糖を入れずに機械だけまわして、割り箸でタライのなかをくるくる二、三回かき回して、

 「はい、出来たわよ」

 とアスカさんは自信たっぷりに渡すのであった。

 その目の悪そうなおじいさんはうれしそうに去っていった。

 もう少しソーラさんとアスカさんがわたあめづくりに慣れた頃に。このふたりが来てくれていたらと今になって思うのである。
 そうしたらもっと大きくて見事なわたあめを渡すことが出来ただろう。残念である。


 そんな訳で、やはり大きなわたあめを上手くつくるためには、基本となる形が美しく整っていなければならない。その基礎の上にはじめてわためを上乗せできるのである。そうでないと、傾いて落ちてきてしまう。

 ソーラさんは、ちょっと工夫を試みる。
これまで、わたあめ雲を追いかけ回してきたけれど……。
それだとどうしても、割り箸の先の方、つまりわたあめの先の方を下にしてわたあめ機のタライの中をかき回すことになる。
 この瞬間に、大きくなりつつあるわたあめは形が崩れてしまうのである。
下に向けさえしなければ、その問題が解決されるのである。