着ぐるみは大変にユーモラスである。
中に誰が入っているのかはわからない。見ている人たちを楽しくしてくれる。
とてもインパクトがある。
中に入る人は大変かもしれない。入ったことがないからわからない。汗びっしょりになるらしいです。
着ぐるみに入っていると、それでも子供たちが触りたがって寄ってきたりします。
この着ぐるみを着ていれば警戒されることがなく、好きな子があれば、さりげなく寄っていって手とかつないでもぜんぜんOKですよ。(あやしーィ、あやしすぎーィ!)
ところで、ある日のこと。
それはミニダックスまちの「生き生き長生き胴も長いぞー祭り」の日のことであった。
ソーラさんとアスカさんのふたりがわたあめを売っていると、こわいお兄さんたちがやって来た。
こわいおにいさん役は、ショボさんとグラサンのじいさんである(覚えてます?)
「ずいぶん、客が多いみたいだなー。こんなとこで、親分に断りもなく勝手に商売していいと思ってんのかー……。いくらなんでもそれはひどいと思うよ。どうなの……。ねーねーねーねー。」
ソーラさんとアスカさんは実際、きちんと生き生きい実行委員会の依頼を受けてやっているのである。まあー、そんなまじモードではないか。
「でもー、……」
アスカさんもさすがに恐れおののいている。
ふたりづれのお兄さんたちは、妙にパリっとした服を着ていて、靴も妙にピカピカなのである。
「ねー、ねー、ねーねー。そこんとこどうなの? 何か忘れてるんじゃないかなー。」
遠慮深げな、でもやけに粘りのある言い方なのである。
(ショボさんけっこう役になりきってるなー。グラサンのじいさんもいるだけでインパクトがある。おー怖ワー。)
そこに転がっていた紙コップをいやらしくギュッっと踏み潰す。
「ヒャー……」
気丈なソーラさんも、あまりの恐ろしさに表情をこわばらせる。
わたあめを買いに来たお客さんたちは遠くへ退いてしまった。
心配そうにこちらの様子をうかがっている。
周りのひとも、心配しながらも、怖いので、見て見ぬふりを決め込んでいるのである。
そのころ、マッキさんは、着ぐるみ当番であった。
着ぐるみを着てまちの中を歩いていたのである。途中子供たちが駆け寄ってきたり。握手をしたり、突進して来る子を受け止めたり。大サービスで抱っこしてあげたりもするのであった。
蹴りを入れてくるガキもいた。しかし、着ぐるみは防御性に優れているのでへでもない。着ぐるみが通ると、お祭りの雰囲気が盛り上がるのである。
着ぐるみが通るとその周りには子供たちの輪ができて人々が集まってくるのであった。
そう、マッキさんの着ている着ぐるみはなんでしょうか?
そのとおり、カエルのほかには考えられませんね。
(ちなみに、太鼓を叩くときはうさぎの着ぐるみです。そこまで言わんでもわかるって……)
マッキさんがまちを歩いていると、わたあめ屋にさしかかったところで、か弱い女の子の悲鳴が聞こえた。
(ヒャー)
どうしたのかな?
そちらを見れば、わたあめ屋の娘さん(もう一人はちょっと年齢の行った愛嬌のある……)たちが、怖いお兄さんたちにいじめれいる。
おっかねー。近づかないようにしよっと。
まずは、そう思った着ぐるみのマッキさんであったが……。
よく見れば、あれは、あこがれのソーラさんではないか!