「 ウ・ワ・サ その三 」

                        


 「そうなのよ、わたしこの前見ちゃったのよ。ちょっと見えにくい場所よ。殿方には特にね。ふっくりってね。コブとりじいさんのコブみたいな感じよ。出てるのよー。あれがヘルニアっていうのねー。」

 「……」

 「ねえ、ご主人……。わたしね思うんだけどさ。あんなに美しいソーラさんがヘルニアだなんて残念ねー。わたしみたいな年になれば、別にどってことないのよ。でもあんなに美しいソーラさんが実は、ぷっくりヘルニアだなんてねー。あんなに綺麗なだけにホーーんとに残念よねー。もー。ぷっくりだものねー。かわいそうなソーラさん。あー、かわそう。かわいそう。」

 「……」

 「これは、秘密ですよ。ここだけの話。誰にも言っちゃーダメですよ。ナイショ。ナイショ。」

 ソーラさんが水を飲み終わって戻ってくる。

 「ご主人、そろそろおイモのスライスは出ないの……。お願いよー。じゃねー・」

 アスカさんは行ってしまった。

 ソーラさんのヘルニアは分かっている。もう昔からある。
季節や体調によって大きくなったり、小さくなったりする。でもそれは、今のところ手術する必要はない。ちょっとかっこ悪いけれど、大事にしてつきあってゆくしかない。まあ確かに、完璧な美しさを誇るソーラさんだけに本人もちょっと悔しいだろうけれど……。まあ仕方もないことだ。
 でも、まあ、知る人はそうはいないだろう。まあ出べそみたいなものだ。たいしたことじゃない。


        その四